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第84回体験発表

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体験発表者

49歳 男性 会社員
パニック障害、うつ病

体験発表

私の病気はパニック障害とうつです。だいたい15年位前だと思いますが、パニックに襲われると気が落ち着く事が出来ずイライラする毎日でした。今は亡き母が、三島森田病院の事を新聞で知り、どうしようもない状態で先生に診察してもらったと思います。

1回目、2回目の入院では、森田療法といってもそれらしい行動、作業はなく、自分一人で作業を探し行動するというパターンでした。指導員もいなくて、今のように農作業をしているのではなく、よく窓掃除をしたり、当時は病院の引越しの手伝いをひたすらしているのが、作業のようなものでした。

田原先生という人(昔、森田正馬の看護婦をやっていた人)の寮に行き二人で話をしたり、田原先生の部屋の掃除をしました。その時、「今何を考えながらやっている?」とか聞かれましたが、私はパニックで恐る恐るやっていた気がします。今思えば、掃除に集中していれば症状も安らぐという言を教えたかったのだろうと思います。

この頃は、パニック障害とは言わず、不安神経症と言っていたはずです。その後仕事に復帰するとき職場を替えてもらい、恐る恐る仕事を始めました。人間というものは忘れるという武器があります。忘れる事が出来なければ人間は破滅してしまいます。神様がくれた忘れる時間のおかげで、仕事を続けるうちに症状が薄らいでいくのがわかりました。パチンコ店で玉がたくさん出ると不安でパニックになる事もありましたが、少しずつ慣れて15年という月日が過ぎました。

3回目の入院のときは、仕事の上司が代わって嫌で嫌で休みがちになり入院したと思います。入院すると症状も出ましたが、3ヶ月程で職場復帰する事が出来ました。今度も職場を替えてもらい仕事も順調にいっていたのですが、仕事が忙しくなり、又上司、社長も代わると、今までとは仕事内容も変わって行き、又仕事を休みがちになり、うつ状態というか月曜日になると出勤するのが嫌になりました。月曜日とか自分が休んでも影響のない日に休んだりし、欠勤・有休等40日位使うようになりました。
先生に、私はうつなのか、仕事嫌いなのか聞いたりしましたが、うつの症状というものは素質と環境が入り混じりよくわからないものだとの事でした。

そして今回、4回目の入院となりました。今回の入院は、今まで何回も入院しているので、作業のやり方や、森田療法の理論も集団療法で学んで、一通り自分なりに理解しているつもりです。私の考えですが、森田療法とは、一言で言えば、我慢してやる事だと思います。入院して先輩方に、今までとは違う掃除の仕方とか、農作業でもすっかり忘れてしまっていた、うね作り、種植え、荒おこし、水やり、結束、耕運機の使い方とかを教えてもらいました。私はある程度やった事があるので作業の方も早く覚える事が出来ました。しかし、喘息が有り、重労働の時は少し苦しい思いをしました。タバコは1日10本からスタートし、毎週1本ずつ減らしていきだいぶ少なくなりました。職場復帰の時には0本で体調を良くしていきたいと思います。
今回の入院は私にとっては慣れた入院ですが、一日一日を規則正しく生活する事が大事だと思います。先輩のある人は、作業中や作業が終わったあともひたすら仕事を探し、作業や農作業の準備をしている。その姿を見ていると森田療法を良くやっているのでとても良いお手本になります。私はまだまだだと思います。

もうすぐ入院して3ヶ月がたちます。職場に復帰して仕事をさせてもらえるのか、クビになるのかわかりませんが、一歩一歩前進していきたいと思います。今回の入院生活は今までの復習みたいなものです。入院生活ではパニックは少しはありましたが、今ではこんなものかと思えるほどです。今では15年間の症状との闘いはなくなり、自分の症状を受け入れて作業するようなくらいになりました。

うつのほうはまだまだ自分でもよくわかりません。これから職場復帰すればわかると思います。最後に森田療法を知り、私はとても良かったと思います。先生も言われますが、森田療法には副作用がなく、みんなしっかり勉強して良い結果が得られると思います。私の好きな言葉は『外相を整いて内相自ずから熟す』です。この後の人生でも森田療法を忘れる事なく、一家の主人としてしっかり仕事に精進していきたいと思います。

講話

今回はパニック障害とうつ病に見回れた方の発表ですね。あなたというとパチンコを思い出します。パチンコで玉が出ないと平静なのに、じゃらじゃら玉が出だすと緊張して不安発作が出るというものでしたね。玉を出して儲けるためにパチンコをしているのに、あなたは「もし玉が出たらどうしよう」という予期不安にみまわれるという珍しい体験の持ち主でしたね。
あなたは以前はもっぱらパニック障害に悩んでいましたが、最近はうつ症状が主となっています。今回の話のテーマはパニック障害およびうつ病ということで話をしてみたいと思います。

パニック障害は以前、不安神経症と言われていました。あなたの初回の入院は15年ほど前ですが、その頃はまだ一般的に不安神経症と言われていたと思います。しかし今ではパニック障害と言うのが一般的です。

1980年にDSM-Ⅲという国際的診断基準で、不安神経症はパニック障害と全般性不安障害に分かれたのです。両者の区別はパニック障害では「発作」があるということです。時間としては30分から1時間くらいで、症状としては動悸、呼吸困難感、めまい感、喉頭違和感などがあります。

動悸は心臓がドキドキして死の恐怖を覚えるもので、心臓神経症とも言われます。救急車で病院に運ばれても、心電図など諸検査をして先生から異常なしと言われる頃には症状は自然にケロリと治まってしまい、大手を振って帰ります。呼吸困難感は息が苦しい気がするもので、ハアハアしてくると過呼吸症候群となってきます。これはパニック障害を基盤にしています。めまい感は真のめまいとは違います。真のめまいは景色が揺れたり回転したりするもので耳鼻科的には眼振が認められます。
他方、パニック障害の「めまい感」では景色が揺れるというより、足元がフワフワした感じ、倒れるような気がします。しかし平衡感覚自体の異常ではありませんから現実に倒れることはありません。
喉頭違和感は喉が詰まった感じがするもので、喉頭球とかヒステリー球などとも言います。
パニック障害の他の症状としては発汗、嘔気などがあり、こういった症状が突然予期せず発作的に起こり、次から予期不安に悩まされるものです。

これに対して全般性不安障害は、将来おこるかもしれない不幸(病気、事故、失敗など)を過度に心配するなどの漠然とした強い不安感が、心配性、取り越し苦労、完全主義などの神経質性格を基盤にして長く続くものです。

さて、森田正馬の神経症分類では神経症は強迫観念症、発作性神経症、普通神経質に分けられます。強迫観念症は強迫、対人関係について起きてきます。発作性神経症が今でいうパニック障害に当たります。つまり、森田正馬は1980年のDSM-Ⅲに50年以上先駆けてパニック障害が単独の疾患と見抜いていたのです。

パニック障害の症状は出現の仕方には特徴があります。パニック障害の症状は二重構造となっています。まず第一に、中核症状としてパニック発作があります。予期せず突然起こり、しかも死の恐怖があるため、きわめて苦しい経験をすることから救急車を呼ぶことが多いです。第二にパニック発作の外側にある予期不安の存在があります。パニック障害の中ではむしろこちらが大きいのです。単にパニック発作だけなら内科へ行くこともありますが、予期不安になると精神科での対応になってきます。
予期不安として広場恐怖というのがあります。ここでいう広場とは空間に対する恐怖です。自分が自由になれない場所、例えば飛行機や新幹線などで、乗り物は勝手に止められないので怖いという乗り物恐怖はよくみられます。自分が運転する自家用車などは勝手に止められることから安心なのです。トンネルや橋も恐怖です。いざという時脱出できないからです。また床屋、歯医者も恐怖です。施術の間自由に動けずじっとしていなくてはいけないからです。また人混みも怖い。群衆の中で突然倒れたり騒いだりするのがみっともないからです。
逆に無人の野原も怖い。これはひとりぼっちで誰も助けてくれない恐怖があるからです。あれやこれやいろんな空間が怖くなると、究極的には外出恐怖となり、引きこもりとなっていくのです。

1回のパニック発作で一生悩む人がいます。たいてい予期不安が長く続く例が多いです。大震災がトラウマになって一生音に敏感になるというPTSDと同じように、パニック発作がトラウマのようになって予期不安が続くのです。これらのことから二次的に抑うつになっていく例もあります。

最近では二次的抑うつだけでは説明できないこともあります。うつ病になった人が後日パニック発作を起こすことも多いのです。出現時期が異なるものを含めると、パニック障害の50~60%がうつ病と合併するとも言われています。パニック障害はうつ病という広い概念の疾患の一グループであり、うつ病の一部にパニック障害があるとも言えます。パニック障害の人はもともとパニック障害とうつの両方の素因があるとも最近では考えられています。その証拠にSSRIは双方の疾患に使われます。

パニック障害の治療においてはまず薬物療法が重要です。薬物としてはSSRIが使われます。SSRIを使うと発作の回数が減り症状全体が改善されます。SSRIの内でもパキシル、ジェイゾロフトがパニック障害では使われます。
予期不安に対しては抗不安薬を使うことにより楽になっていきます。日本では一般にSSRIと抗不安薬の双方が使われることが多いです。欧米では急性期に一時的に抗不安薬を使ってその後はもっぱらSSRIを使う例が多いです。他方日本では、軽症なうちは即効性があり副作用の少ない抗不安薬がもっぱら使われますが、重症になるにつれて副作用覚悟でSSRIを使う頻度が多くなる傾向があります。つまり日本の方が抗不安薬が好まれています。

パニック障害の治療としては精神療法もあり、特に予期不安に対して行います。精神療法には認知療法、行動療法、森田療法、内観療法、EMDRなどがあります。

森田療法のメカニズムについてですが、一言でいえば行動によって予期不安を打破するということです。予期不安があると外出恐怖となります。そこで、外出恐怖があるにもかかわらず外出をしてもらいます。森田療法でいう「恐怖突入」です。実際にやることにより自分が思っているよりも行動しても症状が出ない、やってみると意外に出来るものだなと感じるものです。
恐怖突入で実践してみて、実績をあげて予期不安を打破していくのです。SSRIと森田療法を組み合わせると、パニック発作と予期不安の双方を改善できます。森田療法をしていくと自然と抗不安薬の量を減らすことができることも多いのです。

あなたの体験発表ですが、月曜日になると症状が出るとのこと。さぼり症という要素があるのか、うつが残存しているのか、その両方が合体している面もあるでしょう。パニック障害が基盤にある人はうつに成り易いですし。だから症状がきつくなり月曜日がダメになるのですね。
この場合、恐怖突入でやってみる。退院してから実際にやってみることです。これまでの入院はおっしゃるとおりチャランポランな時もありましたね。今回は先輩に真面目にやる人がいました。彼に引っ張られ、作業に真面目に取り組み、結果として後輩に教えるといった体験が得られましたのは今回入院の収穫です。

退院後はいかに入院での体験を実生活で実践できるかが重要ですね。今後の活躍を願っています。

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