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第95回体験発表

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ベークドチーズケーキ
レモンムース
ブロッコリーの塩茹で
紅茶

体験発表者

27歳 男性 うつ病 無職

体験発表

症状が出始めたのは、ちょうど1年くらい前からです。僕は大学を卒業し、地元の企業に就職しました。そこで働いている先輩たちの給料の安さ、また副業などをしている人たちを見て、先を見据えて退職する事にしました。
その後、叔父が経営している企業なら給料も将来も安心だと考え、妻と2人で引っ越してきました。働きはじめた当初はやる気に満ち溢れとても楽しい日々を送っていたのですが、だんだんと身内で働くということの大変さ、プレッシャー、役職の重み、そしてその業種に対してまでも興味が持てなくなりました。もうその頃には、仕事に行くのが本当に苦痛で出勤の車の中でも日々泣いていた程です。

そんな時、職場の上司に三島森田病院をすすめられ診察を受ける事になりました。
先生の診察結果はうつ病ということで、すぐに3カ月の休職をすることになりました。その間外来で診察を受けつつあっという間に3カ月の月日が経ちました。そして症状も良くなりかけていたので職場復帰する事になりました。

復帰した当初は良かったのですが、まただんだんと症状が悪くなりその時ちょうどある事件を起こしてしまい仕事を辞めざるをえなくなりました。
先生が言うには「それも病気のせいである」とおっしゃってくれたので少し気が楽になりました。しかし、その後就職活動を始めたところ、どこもかしこも不採用の連発で自信は喪失し、しまいには生きる意味すら失ってしまっていた状態でした。
そんな中、先生にこの森田療法をすすめられました。自分は全く興味も乗り気もなかったのですが、家族、特に妻の説得によりこの森田療法を受ける事にしました。

まず、臥褥を行ったのですが、自由を奪われる生活の中で自分は何でこんなことをしなければならないのかと思い、2、3日でリタイアしてしまいました。そんな中、先生に「君には我慢と辛抱が足りないだけ。それが自分で自分を病気へと悪い方向に持っていっている」と言われました。
その言葉を聞き、今までの自分の人生を振り返ってみると、欲しい物はすぐにでも手に入れないと気がすまないだとか、自分の思い通りにいかないと納得出来ないだとか、先のことばかり見据えて今現在のことが見えていないだとか、思いあたることが山ほど浮かびまさにその通りだと思いました。だから、臥褥をリタイアしてしまった今、ここで森田療法を諦めてしまったら今までの自分と何も変わらないと気付き、そのまま治療を続行することにしました。

そして、軽作業期、重作業期と続けていく中で気付かされること、感じさせられることが沢山ありました。
まずは、洗濯やシーツ換えなど自分の身の回りのこと、食事の配膳、そして毎日の朝・夕の掃除当番など、普通の人にとっては当たり前のことかもしれませんが、これまでの僕の人生ではやったことのないことばかりでした。
いかに自分が甘えて育ってきたのか身にしみて実感させられました。また、畑仕事に関しては今まで実家の畑の手伝いをしたことがあったので、それほど抵抗はなかったのですが、指導員のもとで畑仕事の楽しさ、畑を思う人一倍の心、そして一つのものを育てるということにはどれだけの時間と苦労、我慢と辛抱が必要かということを学ばせて頂きました。
また、同じルームメイトたちからもたくさんのことを学びました。Aさんには人としての優しさや温かさ、Bさんには努力や諦めない心、Cさんには真面目さと誠実さ、Dさんには自己主張ができる所とひょうきんな所、Eさんには真面目さと謙虚な心。みなさんからいろんなことを教わりました。

先生に「君にはここでしっかりと3カ月我慢して生活したという実績が必要だ」と言われました。今の僕は、今までの僕とは違います。しっかりとここで3カ月間我慢して生活したという実績と、我慢と辛抱する大切さ大変さを学びました。
これからは、森田療法で学んできた事教わってきた事を武器に荒波の社会へと自信を持って出ていきたいと思います。

講話

無事3ヶ月過ごす事が出来て良かったですね。毎日毎日帰りたいと言っていましたが、ある時から人が変わって本腰を入れて取り組んでいくようになって、最後よくなって退院することができました。

さてあなたはうつ病ですね。うつ病というのは元々は森田療法の対象ではなかったのですが、現在ではうつ病の方も森田療法の対象として増えてきています。

うつ病の生涯罹患率は6,7%、つまり生涯15人に1人がかかる病気なのです。さらに時点有病率、つまり今現在うつ病にかかっている人はWHO(世界保健機構)によると3%と言われます。

わが国の人口は1億2千万人ですからわが国の潜在的なうつ病患者は400万人ということになります。うつ病の入院・外来患者さんは100万人になろうとも言われますが、それでも氷山の一角にすぎないことがわかります。

さて精神科疾患の従来診断(クレペリンによるもの)は下表のようになります。

さらにストレス脆弱性モデルというのもあります(下表)。


内因的に発症となる原因を有しているが、
何かのストレスがきっかけで発症してしまう。

キールホルツのうつ病分類というのがあります。うつ病を原因別に分類したものです。

この分類によるとあなたの場合は、神経症うつ病あるいは反応性うつ病にあたります。
さて治療ですが、あなたの場合、環境による影響が大きかったため(心因的うつ病)、環境を変えるという治療が有効です。その一つの手法として森田療法を行いました。

森田療法というのは精神療法ですが、それとともに生活そのものの訓練なのです。ゆるい所から厳しい所に少しずつ適応していく訓練なのです。
勉強でいえば、いきなりテストを受けるのではなく、まずは練習問題を繰り返ししてからテストを受けるようなものです。

まず第一に、作業療法では単純な軽作業からだんだんと複雑な重作業を行っていきます。
第二に、生活では規則正しい生活リズムを会得していくとともに身の回りの活動を自力で行っていきます。
第三に、共同生活つまり共同の目標を遂行していく生活の中で仲間意識が芽生えていきます。そのことでリーダーシップ、協調性、指導力がみがかれます。
以上の点で入院当初からみて退院に近い頃は大きく変わっていきます。未熟から成熟へと成長していくということです。そうすると、退院後に入院前と同じ環境に帰っても以前よりも粘り強く打たれ強くなっているのです。つまり、森田療法というのは人間を成長させていくものなのです。

あなたの場合、今回の入院を通して我慢を学びました。最初はすぐあきらめていた事が今では継続して行えるようになっています。あとは勇気を持って外に出ていくことが大切です。
これからも頑張ってください。

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