三島森田病院で実施されている「森田療法」の情報をご覧いただけます。
森田療法の説明
1.森田療法とは
1920年頃、森田正馬が創始した、神経症に対する我が国独自の精神療法です。
森田正馬の分類によると、神経症には①強迫観念症……対人恐怖(社会不安障害)、不潔恐怖・確認癖・雑念恐怖など(強迫性障害)と、②発作性神経症……動悸、呼吸困難感、めまい感などが発作的に出現して外出や乗り物に対する不安が増大するもの(パニック障害)と、③普通神経質……不眠、頭重感、書痙、胃部不快感など(身体表現性障害)があります。これらの症状に対して、①症状は人間普遍的なものとしてあるがままに受容して、②当面の現実生活においてやるべきことを目的本位に行うことにより神経質性格を生かしていく、というのが森田療法の治療原理です。
森田療法は元来は神経症を対象とした治療法ですが、最近では、うつ病、統合失調症、アルコール依存症など種々の疾患に適応が拡大しています。
治療形式には入院治療と外来治療があります。入院治療は森田療法の原点というべきもので、「原法」(森田正馬自身が施行した森田療法)では、森田正馬の自宅に患者が住み込むという形式が取られました。入院治療は体系化されており、次の4期に分けられます。
①第1期(臥褥期):1週間個室で過ごし、洗面・食事・排泄以外終日安静臥床の姿勢を取るもの。症状に直面し、受容する態度を形成し、作業療法にスムーズに移行させる意味があります。典型的には、安静 → 煩悶 → 退屈 の経過をたどります。
②第2期(軽作業期):起床して作業を開始しますが、激しい運動を制限するもの。外界を観察し、活動意欲を刺激させる意味があります。
③第3期(重作業期):すべての作業に従事するもの。症状があっても目的本位に行動していくという現実的態度を形成させる意味があります。
④第4期(生活訓練期):社会復帰の準備期間で、外出・外泊も実施されるもの。
2.当院の森田療法の歩み
当院は昭和34年に開設されましたが、当初から入院森田療法を施行しています。初代院長の森田秀俊は森田正馬の養子であり、森田正馬の晩年に付き添っていた田原あやが指導員として30年以上勤務したこともあり、従来当院の森田療法は比較的原法に近い形で行われてきました。最近は、浜松医大出身の医師が中心となって行われていることもあり、新しい病棟行事も取り入れられており、原法の伝統と大学病院的要素が折衷しています。
3.当院の森田療法の現況
- 病床数:定床は10床(4人部屋2室、個室2室)です。ときに森田療法以外の方も入院します。通常、森田療法は3~8人程度で行われています。
- 期間:通常3~4ヶ月間ですが、症状や退院後の予定により、期間は多少増減します。
- 投薬:従来森田療法は薬を使わない治療法として有名でしたが、最近は薬物療法の進歩もあり薬物療法を併用する場合も多くなってきました。しかしその場合も、結果として入院前よりも減量できる場合が少なくありません。
- 健康保険:健保適用です。ただし個室は差額料金を要します。
4.当院の森田療法の実際
① 臥褥:トイレ、洗面所の備えられた個室にこもり、一切の気晴らしをせず、安静臥床の姿勢で1週間過ごします。
② スケジュール:軽作業期以降、起床6時、門限20時、就寝22時となっています。
③ 作業:個人作業と共同作業があります。個人作業は、主に病棟各所の掃除で、毎日朝夕の当番が決められて、一人一人分担して行われます。共同作業は主に農作業(雨天時は木工作業)です。平日(土曜午後と日祭日除く)の午前と午後、指導員のもとに患者全員で行われます。入院1ヶ月以上の者は1週間交代でリーダーとサブリーダーに就任します。
④ 診察:週1~2回主治医との個人面談が行われます。また週1回、集団精神療法が行われます。これは医師や看護師等のスタッフと患者全員とで森田療法の読書会、講義、自己紹介などを行うものです。
⑤ 日記指導:軽作業期から退院まで毎日行われます。縦書きで1行おきの記載というのが当院の日記の特徴です。
⑥ 茶話会:約1~2ヶ月毎開催されます。森田療法患者全員でデザートを作り、医師・看護師・作業療法士などの治療スタッフを交えて一堂に会食します。患者の代表者が「体験発表」をし、治療者が講評します。各患者が体験発表、調理、司会、会計の係を担当します。
ワンポイント森田
こちらでは森田療法の認定医である医師が、当院デイケアにおいて行った日常生活に活用できるワンポイント森田の紹介をします。
森田正馬記念館
こちらでは森田正馬の写真や色紙など、ゆかりのある品を紹介します。
森田療法体験発表
茶話会は、平成11年9月から開始した三島森田病院の病棟行事で、月1回程度開催されます。
内容は、森田療法患者様全員でデザートを作り、医師、看護師など数名を交えて一同で会食するものです。その際、あらかじめ決められた患者様1名が「体験発表」を行い、医師など治療者が講評します。
体験発表は、主に退院の近い患者様が症状の起始、臥褥等入院後経過、森田療法の成果などを原稿にまとめ、5分程度で発表します。
この体験発表はご本人の承諾を頂き、匿名性に配慮した上、現在神経症症状等に悩まれている方々のために参考となるべく掲載したものです。